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出汁BAR

このところ料理の素材の味を支える脇役だった“だし(出汁)”を主役にした店が増え、注目されている。例えば「俺のイタリアン」、「俺のフレンチ」など、「俺の~」シリーズを展開する俺の株式会社による新業態、おでん専門店「おでん 俺のだし」が3月7日に銀座にオープンした。
ミシュランからおでんで初めて星を得た「あざぶ一期」や、ミシュラン1つ星の京都の名店「祇園にしむら」の元料理長達が強力タッグを組む。徹底的に“だし”にこだわり、北海道産真昆布、鹿児島県枕崎産鰹節、長崎県産飛魚、静岡県産サバ節など、全国の銘品を集め合わせておでん出汁としている。
続いて、3月20日にオープンした「COREDO 室町2」に、「にんべん」がカフェ・カンパニー株式会社とのコラボレーションで初の飲食業態「日本橋だし場 はなれ」を出店した。鰹節専門店の「にんべん」が三百十余年にわたって培ってきた“だしの旨味”を活かした料理の数々を、一汁三菜のスタイルで提供する。「にんべん」は既に本店で、だしを立ち飲みで楽しめる「日本橋だし場/DASHI BAR」を展開して人気を集めていた。「場」を「BAR」と読ませ、削りたてのかつお節でとった温かいだし汁を、紙コップ1杯120ml100円で提供し、好みで塩やしょうゆを加えて飲むというスタイルだ。立ってだし汁だけを味わう姿は、日本人ならではのものだろう。
“だし”の原点は、縄文時代に食物を煮た「煮汁」だったそうで、その中からやがてかつお出汁の旨味が発見され、朝廷への献上品として珍重されるようになったと言われている。かつおや昆布という乾燥熟成させた海産物で“だし”をとる食文化は日本特有のものだ。この“だし”の力こそが、日本食を世界遺産に昇華せしめた原動力でもある。そして和食は“引き算”で味を引き出す料理であると言われるとおり、お椀に“だし”を張り、椀ダネの素材の味を殺さずより鮮明に引き出すのはその象徴である。フレンチや中華が素材にいろいろな味を加えることで味の深みを出していく“足し算”の調理であるのとは対照的だ。
伏木享京都大学大学院教授は、“だし”の香りは学習が必要で、日本人であっても子供のころに“だし”の香りを体験していなければ、おいしいと感じることが出来ないと言う。日本の“だし”文化は、京都の「一見さんお断り」のように、限られた人だけが究極を楽しむガラパゴス文化の一つだ。

| 14.03.28

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