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Emperor

奈良橋陽子プロデュース、ピーター・ウェバー監督で、マシュー・フォックスが主演、トミー・リー・ジョーンズがマッカーサー総司令官役で出演した、終戦時の天皇制存続の秘話を描いた「終戦のエンペラー」が評判を呼んだ。
第二次世界大戦時の日本における天皇とは何だったのか、を考えさせる映画だ。日本映画がなかなか語れなかった天皇の客観的意味、又戦後日本統治の為に天皇制をアメリカが利用する経緯を、ピーター・ウェバー監督が実に中立的にうまく描き切っている。
論評には、マッカーサーの片腕ボナー・フェラーズ准将は日本を救った、昭和天皇は素晴らしい、これが日本の美点だ、涙が出た、など感情的なものが多いが、劇中の天皇自身は「罪は自分に有って日本には無い、自分は有罪でも日本は救って欲しい」、と核心をついた言葉を残している。
本来、天皇による帝国は敗戦によって昭和天皇を最後に滅びるはずだった。しかし、マッカーサーはその天皇制の存続と引き替えに、何も決められない日本を当時の首相 吉田茂、岸信介らと再建した。日本がアメリカの下僕となるDNAを巧みに埋め込まれたことも監督は示唆している。もし天皇制が敗戦で終結していたら、その後多くの犠牲は払ったかもしれないが、日本は自らの道を自分の力で決めて行く真の独立国家になっていったのでは?とピーター・ウェバー監督が問うているようにも思う。
国土が焼け野原になって敵国に支配されたら、1300年続いた帝国であっても終焉を迎えうることに誰が反論できるだろうか?ボナー・フェラーズの進言によって、日本は「敗戦」ではなく「終戦」に事態を置き換え、戦争責任を曖昧にした。"悪魔の取引"をした日本は、戦争責任を置き去りにしたまま、経済成長とその対価をアメリカへ貢ぐことで生きながらえる情けない国になったのではないだろうか?日中韓の全ての摩擦は、マッカーサーとボナー・フェラーズの仕込んだDNAによって起こっているとも言えるだろう。
オリンピックの招致成功は純粋に嬉しい。しかしその奥に、勤勉な日本人に更に資金を提供させようとするアメリカの経済的"罠"が無いことをただただ祈るのみだ。奇しくも吉田・岸両首相の孫が現日本の首相・副首相を務めている。これは偶然の一致なのか?!

| 13.09.13

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