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若年者福祉

若者の投票率が低いと若者が損をするという話は、選挙が行われるたびに耳にする議論だ。
参院選を目前に控え、東北大学の研究室は若年層の投票率の推移と政府予算の統計を分析し、この説を実証する研究論文を発表した。研究によると、若年層の投票率が1%下がることに若者は1人あたり年に13万5000円分の不利益を被ることになるのだという。過去の統計データをもとに具体的な若者の損失額を試算する研究は珍しいと話題になっている。
彼らの分析によると、若年層(20~49歳)の投票率が低下するに従って新規の国債発行額が増加し、社会保障支出も若年層より50歳以上の層に多く配分されていることが明らかになった、という。額に直すと、若年層の投票率が1%下がった場合、国債が若年者1人あたり年額7万5300円分新たに発行され、「若年世代1人あたりの児童手当などの家族給付の額」と「高齢世代1人あたりの年金などの高齢者向け給付」の額の差が年に5万9800円拡大。この2つを合計すると、若年層1人あたり年に13万5100円分の経済的不利益を受けるという計算になり、若者よりも高齢者が手厚く保護される様子を浮き彫りにした。
既に若年層には社会的弱者といってよい人たちが増加し続けている。これまで高齢者福祉ばかりが考えられ若年層への社会的支援が顧みられなかったのは、バブル崩壊までの高成長を前提とした社会モデルを引きずっていたからとも言える。そのため自立できない若者は親が何とか支えていたが、もう続けることが難しくなってきている。やがて振り込め詐欺に何百万円も払えるシニア層を、貯金もできない若い労働者が支えなくてはいけない状況になってくる。むしろ若者こそが社会的弱者であり、若年世代への福祉の充実こそが社会全体としてプラスになると考えるべき時が来ていると言えるだろう。
分裂し無残な結果が待ち受けている野党だが、若者の選挙参加を訴えるのであれば「若年層福祉」の必要性を挙げなければならないはずだ。それに気づかない野党は敗北するしかない?

| 13.07.19

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