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男子不在

今年のバレンタインデーも、ホワイトデーも、その商戦に大きな異変が起きていたようだ。 男性に思いを伝える為に女性がチョコレートを贈るという例年のバレンタインデーでも、そのお返しとして男性がスイーツなどを購入する習わしのホワイトデーでもなく、両日とも女性同士がチョコを贈り合ったり、自分の為に買い求める “男子不在”の女性内完結化へと市場状況が変化しつつあるというのだ。
実際、SBIホールディングスの「保険の窓口インズウェブ」の調査によると、「バレンタインデーとホワイトデーは面倒だと思う」という男性が65%を占めた。プランタン銀座(東京・中央)の調査では、男性からのホワイトデーギフトに期待する金額は本命(6456円)、義理(1144円)と、5年前の調査開始以来の大幅減で過去最低となり、この日にかける意欲・期待とも激減していることは確かなようだ 。
両イベントとも、すっかり“男子不在”感が強くなってしまったが、種の保存においても“男子不在”が起きつつあるようだ。アメリカでは、子作りに男性は必要ないという女性が増えている。精子バンクを利用した体外受精の生殖テクノロジーを使って、カップルでなくとも(シングルマザーでも、同性カップルでも)子供を産み育てるという選択肢が可能となっているからだ。精子バンクでは、今やパイロット、医者、外見、性格の特徴、身長、髪の色、えくぼの有無など、さまざまな条件で精子を選ぶことが可能だ。
また、デンマークで2002年に開設された外見至上主義の出会い系サイト「BeautifulPeople.com」(http://www.beautifulpeople.com)では、最近、地球上にもっと美しい人間を増やす為の、会員による精子バンクと卵子バンクのサービスを始めた。60万人以上の会員を持ち世界最大の美男美女コミュニティーを自任する同サイトによれば、これは「美しい人の精子や卵子だけを残す画期的サービス」とのこと。たとえ自分は醜くても子供は美しくあって欲しいと願う人の為にも『美の遺伝子バンク』だ。
一方、人間の男の精子の質そのものも劣化している。もともと男子のXY染色体は、女性のXX染色体の搬送体だ。しかし一夫一妻制の為、人間の精子同士の競争が極端に少なくなり、次第に人間の精子の能力は退化して来たと言われている。そこへきて人工授精が発達すると、益々強いだけの精子は必要なくなってくる。
やがて人類は、遺伝的に優れた受精卵だけを確実かつ簡単に作る技術を確立させていくだろう。もともと女性の遺伝子交換の為に生まれた女性の変異体である男性は、遺伝子テクノロジーの発展と共に、消え行く事はないにしても、やがて存在の薄い生き物となって行くのだろうか?バレンタインデーの衰退はその予兆か?

| 13.03.22

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