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“スタンプ”コミュニケーション

Facebook、Twitterなど米国発のサービスが多いSNSの世界で、スマートフォンで使う日本製の「LINE」が存在感を増している。昨年6月末にサービスを始め、今年9月上旬には登録ユーザーは世界で6000万人、国内でも2800万人を突破した。最初の8カ月ほどで2000万ユーザーを獲得した速さは、Facebook、の28ヶ月を大きく上回った。
そもそも「LINE」は携帯電話における “通話”や “SMS”のリプレイスだったが、開発したNHN Japanの森川亮代表によると、 日本のコミュニケーションサービスでは絵文字やデコメ的なものがフィットするのではないかという仮説のもとに、“スタンプ”を出したのが当たったとのことだ。実際250 種類以上のオリジナル “スタンプ”は、一瞬で喜怒哀楽が伝わる、文字に変わるコミュニケーション方法として、世界各国から絶大な支持を得ている。特に台湾では“スタンプ”のキャラクターがタレント並みの人気になっているそうだ。“スタンプ”機能は「メール本文=文字」とは切り離されており、”スタンプ”というネーミングどおり、押すと“スタンプ”だけが相手に送信される。そもそも人間は「言語」よりも「感性」が先立つ生き物であり、ソーシャルメディアに“リアルタイム性”が求められる今、言語以上に感情的な表現のできる “スタンプ”を使った「ビジュアル・センス・コミュニケーション」は大きなトレンドになってきている。
7月から提供を開始した企業によるスポンサードスタンプの第一弾は、日清食品が発売するチキンラーメンのキャラクター「ひよこちゃん」と、ローソンのキャラクター「ローソンクルー♪あきこちゃん」のスタンプ。期間限定で配布されたが、日清食品のひよこちゃんスタンプは1日に400万件以上使われた。「LINE」ならではの感情豊かな企業キャラクターが、「LINE」上で飛び交ったのだ。企業がキャラクターを介して消費者とコミュニケーションをとる事例は、世界で日本がいちばん多いかもしれない。特に最近のキャラクターは “売ること”を目的とせず、Webやイベントなど多様な消費者との接点でコミュニケーションツールとして活用されるケースが増えてきている。
感性によるコミュニケーションは、日本の「禅」や「ワビサビ」にも通じるもので、言語を超越した、極端に言えば全世界人口70億人が理解し合えるツールにも成り得るということだ。「LINE」は、開発者の森川亮氏の思惑をも越え、世界最強のメディアになる可能性をはらんでいるのではないだろうか?

| 12.09.21

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