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袋麺バトル

東日本大震災後に非常食として需要が拡大、中食ブームの影響もあって、2010年度比104.2%の生産増加となったインスタントラーメンだが、中でも、年々減少傾向にあった袋入りのラーメンが人気復活傾向にある。
袋入りラーメンは1989年に生産量をカップラーメンに追い抜かれて以降、生産量では2倍を超える開きがあるものの、2011年の伸び率はカップラーメンの3.9%に対し、袋入りラーメンは4.9%を記録して、生産伸び率ではカップラーメンを追い越した。そして、「サッポロ一番」や「チキンラーメン」といったメガブランドが根強い人気を誇る保守的な袋入りラーメン市場において、昨年末に東洋水産が新発売した「マルちゃんラーメン正麺」は大ヒットを記録し、それが袋入りラーメン人気復活のきっかけにもなっている。「マルちゃんラーメン正麺」ヒットの理由は、従来のもののように日持ちがするのに、“生麺”のような食感を残す「生麺うまいまま製法」という、まったく新しい製法が取り入れられていることだ。東洋水産は、「マルちゃんラーメン正麺」の売上げが3カ月で42億円に達したため、初年度100億円の販売目標計画を200億円に上方修正したそうだ。袋入りラーメンは一度ヒットすると根強い人気商品になるため、他社も新商品を続々登場させ、“生麺感”をめぐる開発競争が勃発しそうだ。
世界で初めて即席麺を発明した安藤百福が、人類に有用だと信じたその製法技術を敢えて自社に留めず、インスタントヌードルとしてグローバル化に尽力した功績は大きい。今や即席麺の消費量は全世界で年間982億食(2011年)に及び、世界の総需要数トップ10は、中国・香港、インドネシア、日本と続き、ベトナム、アメリカ、韓国、インドの順になっている。一人当たりの年間消費量では韓国が約70食、インドネシアは60食に至っている。今後はロシア、ブラジル、メキシコ、ナイジェリアなどの新興国、インド、ベトナムなどアジア各国で加速度的に伸びていくだろう。それに対し、日本の年間輸出量は5980トン(約7000万食)に止まり、輸出実績は、総数量・金額ともに近年伸びていない。しかし、日本の技術輸出でインドネシアのサリムグループ・インドフードは今や世界最大の即席麺メーカーだ。即席麺が流通している国では、既に加工方法は伝播しており、各国のメーカーがシェアを握っている。今後は、即席麺製法が浸透したように、新しい日本発の製法“生麺感”が世界で通用していくかを見守って行きたい。

| 12.09.14

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