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サイボーグ009

10月にアニメーション映画『009 RE:CYBORG』が公開される。石ノ森章太郎原作の傑作SF漫画『サイボーグ009』を、攻殻機動隊シリーズの神山健治監督が映画化したアニメーション。ストーリーは、2013年、ロンドンやベルリンなどで超高層ビルを狙った同時多発テロが発生し、その行方を世界中の人々が固唾(かたず)をのんで見守る中、何の犯行声明も明らかにされない状態が続き次第に誰もがパニックに陥っていく。やがて、これまでも見事にベトナム戦争や東西冷戦などを解決してきたサイボーグ戦士9人が集結・再起するというもの。
かつて石ノ森章太郎は、『週刊少年キング』(少年画報社)で『サイボーグ009』を1964年から連載スタートし、その後も、複数の出版社、複数の雑誌で長・中・短編の作品を発表し続けてきた。しかし、完結編にあたる作品の発表前に死去してしまったため、作者自身による漫画作品は未完に終わっていた。これを“完結”させるため、今年、劇作家・演出家の小野寺丈氏が中心になって、コミカライズ版『サイボーグ009 完結編 conclusion GOD'S WAR』をWebコミック配信、角川庫から全3巻で発売される予定だ。『サイボーグ009』で戦争や科学、地球環境、さらには神の領域にまでペンを走らせた石ノ森章太郎は、完結編構想メモに「2012年に人類は滅亡する。2012年に人類は覚醒する。」と遺している。2012年は彼にとって意味深い年であり、秋の映画公開に向けて、ますます注目されている。
それにしても、似たようなテーマを扱った公開中の映画『アベンジャーズ』は、どうしてあんなに単純なのか?人気シリーズ「アイアンマン」や「キャプテン・アメリカ」「マイティ・ソー」「ハルク」から各ヒーローが、人類史上最大の敵の襲来に備えた「アベンジャーズ」として召集されるというアクション映画で、全世界で累計興収14.6億ドルという驚異的数字を達成し、今年のハリウッド映画を代表する1本とまで言われている。『アベンジャーズ』の上から目線で挑発的な宣伝キャッチコピー、「日本よ、これが映画だ」に、twitterでは不快感をあらわにするつぶやきが集まった。
1960年代日本の高度成長期の科学技術に対する夢は、多くのアニメを生んだ。これら日本のアニメは、今のハリウッド映画にとって宝の山なのだろう。折しも、『サイボーグ009』のハリウッド実写化企画が動き出していることが明らかになった。『アベンジャーズ』のように、単なるアメリカ的ヒーロー映画にされてしまわないことを祈りたい。

| 12.08.17

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