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成熟都市

オリンピック開催中のロンドン。開幕式でのロンドンオリンピック組織委員会セバスチャン・コー会長のスピーチは、
「賑わう商業地としての歴史、人々が集う場所としての歴史、決して立ち止まらない都市としての歴史、こうした歴史が今日のための準備をしてくれました。」と、成熟した都市ならではの内容だった。ロンドンは、都市圏人口が800万人~1,370万人といわれる、ヨーロッパ最大級の都市だ。パリより、市場ボリューム、GDPが高いとされて、クレジットカードのマスターカードの試算は、今年ロンドンへの海外からの観光客数は1,690万人と、パリの1,600万人を抜いて1位、観光客の消費額は211億ドルと、ニューヨークの194億ドルを抜いて1位になると見ているが・・・?
当初ロンドン市内のホテルは、期間中の宿泊料金を通常よりも3~4倍、高いところでは10倍も高く設定した為、予約数が例年同時期を下回り、あわてて値下げ、それでも空室は埋まらなかったという。またオリンピックの観戦チケットが完売にも関わらず空席が目立つなど、オリンピック組織とスポンサーとの癒着による利権構造が浮き彫りにされてしまった。さらに、同時期にロンドン銀行間取引金利(LIBOR)の不正操作疑惑問題が取り沙汰され、ここでも欲にとらわれた人達への捜査や調査が進められている。
そんなロンドンで昨年1月、オリンピックを前に、超豪華なサービスアパートメント「ワン・ハイド・パーク」が誕生し話題を集めた。「世界で最も高級とされる住所に至高の居住空間をつくる」というコンセプトのもと、使用する建材やインテリアなど、贅の限りを尽くして建設され、最高成約価格は1億4千万ポンド(約184億円、推定1,800平米超、平米1,000万円)と、正に世界最高峰のサービスアパートメントだ。だが、このマンションの購入者にイギリス人はほとんどいない。かつてイギリス植民地だった国を含む、20カ国以上の他国籍のスーパーリッチが購入しているのだそうだ。成約価格は不動産価値というより、旧宗主国へのリベンジの思いを叶える値と言えるのかもしれない。
欧州債務危機、景気のどん底の中でオリンピックに期待をしても、ロンドンはもはや世界をリードする先進都市としての役割を終えた感が強い。2020年オリンピック開催に向けて立候補する東京だが、日本人が今ひとつ招致に夢を抱けないのは、その経済効果よりも、裏目に出る弊害を敏感に感じてのことだ。東京は別にロンドンに倣って自らの価値を下げる事はないだろう。東京はすでに成熟化した中産階級の為の都市としては、世界最高の価値を持っている事を知るべきだ!

| 12.08.10

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