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フェルメールカメラ

2000年に「フェルメール展」が大阪市立美術館で開催されて以来、日本でのフェルメールの絵画に対する関心は高まり、彼の作品は多くの日本人の心をとらえてきている。特に今年は、彼が生涯で描いた作品で、現存する37点のうちの6点が来日する。3月14日まで開催されていた「フェルメールからのラブレター展」に引き続き、6月にはほぼ同時期にふたつの美術展でフェルメール作品が鑑賞できるということで、このところフェルメール関連情報も多くなり、まさに当たり年だ。17世紀のオランダの画家フェルメールの作品は、日本人になぜこんなに受け入れられるのか?手紙を読み書きしていたり、家事をしている市井の女性の日常風景がテーマになっているものが多く、そうした日常の一瞬をこぢんまりしたサイズで表現した小ぶり感が、同時期の日本の浮世絵とも通じ、日本人の感性に合っているからとも言われるが、それだけだろうか?
フェルメールは、カメラの前身とも言われているカメラ・オブスクラを通して絵を描いていたという説が有力だ。「暗い部屋」という意味のカメラ・オブスクラは、リアリズムに富んだ絵を描くことが可能で、美術における遠近法・透視画法の確立に大きな役割を果たした。しかし、彼はより人間の視覚に近づける為に、遠近法のゆがみを修正して像を描く術を持っていたとも言われている。めりはりをつけることで、人間が実際に見たときのようなナチュラルさを表現している。
フェルメールがいた時代から400年を経て、日本が世界市場をリードするデジタルカメラは、高画素数のデジタル技術で、リアルな画像を手に入れている。反面、いくら解像度が高くても、画像全体が同じ解像度、と、そこには一様なリアルさがあるだけで、残念ながら肉眼で見たものとは大きく違う。今デジタルカメラ業界は、画素数競争が終焉を迎え、被写体の中心へのハイライト等、より目で観た現実に近い(フェルメール的)進化をしつつあるようだ。パナソニックから発売されている「メイクができるカメラ」は、写真を撮影した後、「ビューティーレタッチ」という機能で、自分の気に入ったイメージのメイクが被写体の顔に施されるという優れ物だ。これなど正に日本人の感性が求めるデジタルカメラのフェルメール的進化だ。今後デジタルカメラの進化は、フェルメールが求めたように、人間の視覚に近い画像が撮れる方向へと進むだろう。ここに日本人の感性に由来するフェルメール人気の原点がありそうだ。

| 12.03.23

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