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ひとり心地

昨年11月発表の国立社会保障・人口問題研究所の第14回「出生動向基本調査(独身者調査)」によると、「彼女がいない」18~34歳の未婚男性は61.4%に及び、彼氏のいない女性も49.5%で、いずれも過去最高だった。しかも、その半数近くが「交際を望んでいない」のだそうだ。単身世帯が確実に増えつつある中、かつての“おひとり様ブーム”が進化し、“ひとり専用店”が増え続けている。
昨年は、“一人焼き肉専門店”、“一人カラオケ専門店”、“一人しゃぶしゃぶ店”が相次いでオープンした。いずれも一号店は東京・神田。ここは今、「お一人様」の聖地とも呼ばれているらしい。そのひとつ、「ひとりカラオケ専門店 ワンカラ神田駅前店」は、利用客がヘッドホンを付けて歌う形式を取り入れ、約2㎡のピットと呼ばれる1人用のカラオケルームが並んでいる。カウンターのある「コクピット」から各ピットに赴くというイメージで、“何かを変える”→“未来に進む”→“宇宙船”という連想から、今のデザインになったのだそうだ。カフェスペースや女性専用エリアがあるのも興味深い。また「一人しゃぶしゃぶ信州屋」は、店内に入るとカウンター席の一つ一つにIHコンロが置いてある。鍋には大勢で食べるというイメージがあるが、それをあえて一人で気兼ね無く、高級なイメージのあるしゃぶしゃぶをリーズナブルに食べるという狙いが当たり、自分のペースで味わえるところに贅沢さを感じる人も多いようだ。いずれの店も今後チェーン展開を予定しているという。
さらに、シニアのニーズを満たして大躍進する旅行会社. 「クラブツーリズム」には、一人旅用のプランがある。「1名1室限定!気軽に気兼ねなく参加できる旅」や「行きたい時に行きたい国へ1名1室利用コース」など、参加者全員がおひとり様で、添乗員が同行するこれらのツアーは、他と比べると割高な料金であるにも関わらず人気を集めている。クラブツーリズムが一人旅に力を入れているのは、友人や家族と都合が合わなくても、気軽に国内や海外を旅行できる人を増やすのが目的だ。
“おひとり様ブーム”の際には、おひとり様でもOKという風潮が一般的になったが、今回の“ひとり専用店”は、ひとりでなければ利用ができないのが特徴だ。ひとりでいるかいないかは、それぞれの人が、自らの価値観で選択するライフスタイルとして定着してきている。今後ますます、ひとりでいることが社会的に大きな影響力を持っていくことは確かだが、ひとりでいることに負い目を感じることなく、「ひとりで使いやすいか?」、「ひとりで心地よいか?」という視点が重要になってきている。

| 12.01.20

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