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シンガポール“are you happy?”

シンガポールは、これまでいわゆる「マナー教育」を推し進めていく中で、カジノの存在を認めてこなかったが、昨年になって相次いでカジノをオープン。中でも「マリナ・ベイ・サンズ」はその奇抜なデザインと巨大さで、世界に注目された。
ラスベガス・サンズ社による総合リゾート「マリナ・ベイ・サンズ」は、3つの高層ビルの上に、ノアの箱舟をイメージした屋上デッキを乗せている。最新の会議施設、国際的に名高いレストラン、5つ星ホテル、カジノ、類をみないショップやエンターテイメント施設等のコンプレックスだ。日本でもSMAPを起用したソフトバンクのコマーシャルで有名になった963室の巨大ホテルは、アジア諸国で著しく台頭してきた“富裕中間層”をまさに飲み込まんとする大きな装置のように構えている。中でも、一般のチェックインカウンターに対し、THE CLUB ROOMにチェックインする特別コーナーの方に人が溢れている光景は象徴的だ。
シンガポールの所得水準は2007年に日本を追い越し、今やアメリカをも1割以上上回っている。食料自給率“0%”という、日本以上に狭く資源もないこの国の急成長を支えてきたのは、自由を制限しながら、教育と経済発展を優先して進めてきた「開発独裁」型の政策だ。また、政府は『向こう20年間に200万人の高度専門人材の移民を受け入れる』という大胆な方針を発表している。世界的な金融危機の影響を大きく受ける中でも、その方針にブレはない。“国王”と言われるリー・クアン・ユー、シェンロン親子の強引とも言えるトップダウンでの政策の実現は、『シンガポール株式会社』として、今や世界一平均的に豊かな500万人の国民(市民?社員?)を養っている。一方で、そうしたシンガポールが「明るい北朝鮮」と揶揄されることも多く、厳罰主義や自由を制限されることに反発する動きも強まっているようだ。
油断したら存在基盤を損なわれかねないという危機感から、常に挑戦を続けるシンガポールは、追い求める幸せの先に何を見ているのだろうか?

| 11.08.22

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