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ドボク好き

「土木」ではなく、カタカナで書く「ドボク」とは、工場、橋、鉄塔、ジャンクションなど、基本的に機能性を重視した土木建造物のことを広義に表現している。最近、そうした「ドボク」を愛でる人たちが目立ってきている。07年3月に出版された大山顕著の『工場萌え』(東京書籍)が、「ドボク」への注目を高めるきっかけとなったと言われており、高まる「ドボク」人気を受けて08年6月には武蔵野美術大学で「ドボクサミット」も開催された。
土木建造物には、建築建造物とは大きく異なり、スタイリッシュな意匠や工夫があるわけではない。そのスケールの大きさや素材感、機能性を重視した嘘のない形態に、「ドボク」好きは魅かれている。マーケティングされた街や取り繕った都市景観に飽きてしまい、むしろ都市を支える設備やインフラに飾りのない都市の姿を発見し、新たな魅力と感じているようだ。また彼らは、インフラとしての機能を失いつつある建造物についても、都市の新たな資産として生かす可能性を模索している。
今回の震災で、自然の脅威の下に多くの土木建造物が破壊されるなどの被害を受けた。自然との共生が理想ではあるものの、人間は便利で快適な人工物を捨てて自然と共に生きることができないことも、あらためて認識させられた。「ドボク」とは、自然界の様々な拘束の中で、人間の夢や希望、思惑、利益を共生させる為、人々が大いに苦闘する姿の産物である。人間と自然の間に横たわる矛盾を抱えながらも、自然と共生することがいかに大切かを今回の震災は教えてくれた。国土開発を「土木」ではなく、「ドボク」で考える感性が必要な時代が来たのではないだろうか。

| 11.05.30

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